Research

研究テーマ

臨床研究テーマ

  • 1
    中心性漿液性脈絡網膜症とストレス、睡眠、自律神経機能の関わり
    中心性漿液性脈絡網膜症発症にストレスが関与していることは長らく指摘されているが、具体的にストレスを評価し、病態との相関を検討した報告は少ない。本研究では、本研究ではCSCと患者を対象に、病歴、全身合併症の有無、疾患活動性、眼科画像所見と各種ストレス因子との関連を検討する。具体的には、内因性糖質コルチコイドおよびACTH、さらに、HPA系の抑制ホルモンとしてオキシトシンの測定と、喫煙との関連が示唆されるセロトニンの測定も行う。また、同時に心的ストレス に関わる社会的な背景、心理状態も合わせて検討する。ストレス評価については糖尿病内科との共同研究で糖尿病患者についても行う。
  • 2
    甲状腺眼症に伴う麻痺性斜視治療法の確立
    甲状腺眼症に伴う麻痺性斜視に関して、副腎皮質ステロイド薬のパルス療法とわが国で最大の症例数の外眼筋手術を行い、従来考慮されることのなかった上下直筋の水平移動術が最も効果的であることを証明し、現在その定量法を作成中である。まず、下直筋の水平移動術の手術効果について2020年弱斜視学会で報告予定としている。また、厚生省の悪性眼球突出研究治療班の「甲状腺眼症診療ガイドライン」作成委員会のメンバーとなり、現在ガイドライン作成中である。
  • 3
    眼球運動障害と眼振患者に対する新規手術治療法の開発
    眼球運動障害に対し、これまでは新たな手術方法の開発を重点的に行ってきたが、術後経過とともに効果減弱例を認めることもあり、外転神経麻痺による麻痺性内斜視に対する上下直筋外方移動術と、強度近視による固定内斜視に対して術後の戻りの定量評価を行い眼筋移動術の長期効果を判定する。さらに動眼神経麻痺による外下斜視に対して内外直筋前後転術に全幅上方移動術を併せて行う新しい術式の評価を行う。また垂直注視麻痺の患者に対して、その注視麻痺の方向とは逆の両眼の拮抗筋を後転させることにより、患者の異常頭位と注視麻痺の改善がみられるかを検証する。現在までに検討した結果は2015年臨床眼科学会にて報告した。また、眼振患者における治療目標は視機能を最大限に向上させることであり、眼振の視機能には静止位、眼振の振幅や強度、黄斑形態等の関与が報告されている。我々はアイトラッカーと光干渉断層計(OCT)を用いた眼振の評価を行い、手術治療前後における眼振と視機能の詳細を解析し、有効な手術療法を検証する。
  • 4
    ウェラブルコンピューター視機能に及ぼす影響の検討(斜視、眼振など)
    眼鏡ブランドJINSによって新しく開発された眼鏡型デバイス:JINS MEME ES_Rは、内蔵された6軸のセンサーを用いることで、頭位、眼球運動、瞬目を短時間で定量的に解析することができる装置である。複視を軽減させるための頭位異常を呈する麻痺性斜視、不随意の振動性眼球運動異常を特徴とする眼振等、日常生活に対する不自由を訴えるも積極的な治療が行われていない斜視患者において、本デバイスによる測定を行い、本デバイスの有用性を検証するとともに、各疾患の病態ならびに現行治療を評価する。現在までに検討した結果は2018年臨床眼科学会にて報告した。
  • 5
    ウェラブルコンピューターを用いた視機能評価(ドライアイ眼瞼痙攣)
    正常患者と比べ、眼瞼痙攣やドライアイ患者等においては瞬目の回数やパターンが違うことは報告されている。そこでJINS株式会社より発売されている3点式眼電位センサーが内蔵されたウェアラブル眼鏡を使用することにより、これまでの瞬目解析方法とは違ってより簡便にまたより自然に近い状態で瞬目のパターンを検出することができるかどうかを検出する。それぞれの瞬目の解析が検出できるようになれば、医師の補助的診断だけでなく、眼瞼痙攣であれば適切なボトックス治療のタイミング、またドライアイ治療における点眼のタイミング等を予想することができると期待する。それぞれの患者により治療のタイミングは異なるため、その人にあったオーダーメイドの治療を提供するための補助的なツールにもなると考えられる。JINS株式会社との共同研究であり、当院倫理委員会に承認され、現在データを集積中である。
  • 6
    眼瞼痙攣患者における涙液異常とボツリヌス治療効果の検討
    眼瞼痙攣患者には涙液異常が認められることが多く、ドライアイと診断され、眼瞼痙攣の診断が遅れることも多い。大学倫理委員会の承認を受け、眼瞼痙攣に伴う涙液異常とボツリヌス治療による涙液の変化についての解析を行っている。この眼瞼痙攣と涙液異常の関連性をシェーマに示す。これらの知見はHosotani Y et al. Characteristics of tear abnormalities associated with benign essential blepharospasm and amelioration by means of botulinum toxin type A treatment. JJO (2020) に掲載された。また、涙液異常と自覚症状の関連性についても研究を行っており、京都府立医科大学病院眼科ドライアイ外来と共同研究を行い、引き続きデータを集積中である。
    眼瞼痙攣患者における涙液異常とボツリヌス治療効果の検討
  • 7
    網脈絡膜疾患における各種画像検査の評価
    黄斑疾患に代表される網脈絡膜疾患の診断や治療効果の確認には、視機能評価として、視力や視野、画像検査として光干渉断層計(OCT)、眼底自発蛍光(FAF)、蛍光眼底造影検査などが用いられている。我々は各種画像所見と視機能異常との相互関係や、病状経過や治療効果を様々な角度から関連を検討している。
    また画像データ解析に関しては、関西学院大学理工学部(岡留研究室、角所研究室)との共同研究を行っており、すでにいくつかの成果を報告している。現在、様々な視機能と網脈絡膜構造変化との関連を検討中である。
    網膜剥離術後の皺襞の定量化
    網膜剥離術後の皺襞の定量化
    (Fukuyama et al. Scientifict Reports 2018)(Komuku et al. Scientifict Reports 2020)
    眼底写真からの脈絡膜厚の推定
    眼底写真からの脈絡膜厚の推定
  • 8
    多施設後ろ向き臨床研究
    臨床網膜研究会(J-CREST):昨今、単一の施設での臨床研究は疾患の数やデータ解析の信頼性という点からも施行することが困難な情勢になりつつある。そのような中、鹿児島大学を中心として様々な疾患の患者情報を匿名連結した上で共有し、検討を行う臨床網膜研究会が立ち上げられ本学眼科も参加の運びとなった。現在眼底疾患を主とした数件の多施設臨床研究が進行中である。
    黄斑下出血例の病態及び視力予後に関する多施設後ろ向き観察研究
    網膜下出血は、加齢黄斑変性や網膜細動脈瘤に合併して生じることが多く、黄斑下の多量の出血例では高度の視力低下をきたす。視力低下の原因として、血液中の鉄分による網膜視細胞層への障害が指摘されており、硝子体腔や網膜下へのガス注入やt-PA(組織型プラスミノーゲン活性化因子)の投与などによる速やかな血腫移動術が推奨されているが、治療後の視力予後に関しては症例によりばらつきがある。今回、多施設から黄斑下出血をきたした症例を集め、出血時の所見と治療選択ならびにその予後を検討する。
  • 9
    バーチャルリアリティー(VR)技術を用いた生体計測
    患者さんの中には視力以外にも複雑な視機能異常を訴える場合が多くみられる。これらの視機能異常を患者さんの『自覚』から『他覚』所見として、第3者に伝わるように忠実に再現するのは現状では困難である。近年VR技術という工学的な技術で、人間の視覚を再現することができるようになってきている。我々は関西学院大学理工学部(井村研究室)との共同研究を行っており、これらの技術を用いて、従来の検査方法ではとらえることができない複雑な視機能異常を、バーチャルリアリティ(VR)技術を応用して、他者を介さず、 より正確に3次元的な視機能異常を検出することを目的としている。
  • 10
    緑内障研究
    当院で施行されたトラベクレクトミー、ロトミーやニードリング、緑内障インプラントなどの緑内障手術前後の各種データを用いた手術成績や各種検査の術前後の変化の検討を行っている。2018年臨床眼科学会にてスーチャートラベクロトミー眼内法の術後経過を、2019年日本眼科学会でブレブの形状とニードリングの術後経過との関連について報告した。緑内障手術は現在様々なデバイスの登場や手術手技の進歩があり、当院でも最適な手術方法や手術時期を検討している。
    また近年、各種眼疾患による生活の質の低下に対して視線解析装置を使った研究が報告されており、当院でも視線解析装置を用いた緑内障患者における健常者と比較した視線データの比較を今後検討する予定である。